マイコプラズマ感染症診断に朗報です!昨年、一昨年と猛威を振るったマイコプラズマ感染は、軽いのどの炎症から重症な肺炎まで起こしますが、他の病原微生物と異なり、病原体としての強さはさほどありません。問題は患者さんの体質によって肺炎や喘息など症状が変化することと、急速に広がる耐性株(薬剤が効きづらい)への対応です。また、発症までの潜伏期も長く、周囲に感染が広がってしまいますが、マイコプラズマ感染症の診断は、今までインフルエンザの様に精度の高い簡単な検査はありませんのでした。しかし、今年の夏より遂にマイコプラズマそのものをみる抗原検査が出来る様になりました。従来の抗体検査に比べ精度の向上が期待出来ます。幸い今年はまだマイコプラズマ感染症の流行はありません(右グラフの太赤線)が、流行時には威力を発揮することが予想されます。備えあれば憂いなしです。
さらに難解なのがクラミジア肺炎です。当院では昨年より、全肺炎の10%をしめるクラミジア肺炎の診断に有用な次世代迅速検査の調査にエントリーしており、普通の採血をするだけでわずか15分でより詳しい検査が出来る様になりました。クラミジア肺炎は、我々呼吸器感染症医にとって、長年ブラックボックスに入っていました。理由は様々ですが、現行検査の精度が低いのが最大の原因です。この調査をもとに、世界初のクラミジア肺炎迅速検査が一般に使用出来る様になり、全国の呼吸器科医の積年の不満が解消かれるかもしれません。マイコプラズマ肺炎とクラミジア肺炎の特徴は発熱と、頑固な空咳です。このような症状の方は、是非ご相談下さい。なお、クラミジア感染の検査は認可前ですので、検査費用は発生しませんが、同意書にご署名頂くこととなります。詳しくは医師にお尋ね下さい。
また、今まで診断の難しかった非結核性抗酸菌症にも新たな検査が加わりました。非結核性抗酸菌症は汚染された水を吸入して発症する慢性の肺炎で結核の仲間に分類されますが、他人に感染しないことや、多くは治療が効きづらいことなど結核と異なります。病気を持たない中年の女性を中心に近年増加傾向にある疾患で、診断が出来ないこともあり度々問題になります。今回、採血で最も多いMACと呼ばれる菌が約70%の感度で診断出来るようになったことは、大きな進歩です。さらに昨年より恐ろしい結核でも新たな検査が手軽に出来る様になり、鬼に金棒です。
以上、呼吸器感染症の分野では様々な検査が開発されて、より的確な診断が出来、治療に反映出来る様になって来ました。当院ではこれら新しい検査を駆使して、敵を見極めて治療を行っていきます。