脳や心臓の血管のリスクを把握し、将来心筋梗塞や脳梗塞を未然に防ぐことは、家庭医の最も大切な役目です。メタボリックシンドロームで注目されている高血圧、糖尿病、脂質異常はこの2大血管疾患の大きなリスクとなります。糖尿病は、食事、運動、加齢、遺伝などの要素が複雑に絡み合い、症状もなく進行します。悪玉(LDL)コレステロール高値、善玉(LDL)コレステロール低値、中性脂肪の高値である脂質異常症も全く症状がありせん。当院では、これらの疾患を単に治療をするのではなく、最近話題の頸動脈エコー検査(痛みもなく10分程度で検査出来ます)を行い、動脈硬化の評価のひとつにしています。一つ目の写真は正常の方の総頸動脈のエコーです。血管内部の矢印の部分が内膜中膜複合体(IMTと略します)と呼ばれ、ここが厚くなって動脈硬化が進みます。隣の写真は同じ総頸動脈のエコーですが、IMTが相当厚くなっているのが分かります。最後の写真は血管内部に巨大なブラークが存在します。これがもっと発達すれば、動脈を閉塞してしまいますし、同じ様なものが脳にあれば、恐ろしい脳梗塞になってしまいます。
もうひとつの評価が、血圧脈波検査(いわゆる血管年齢)で、写真は患者さん向けの説明文です。両手、両足の血圧を測定することで、足の血管の狭窄度やしなやかさを測定し、血管年齢として表示します。検査自体の痛みは全くありません。もしこれら検査で問題があれば、脳梗塞、心筋梗塞のリスクや足の血管が狭くなっている閉塞性動脈硬化症の疑いがあります。このような場合、必要に応じて負担の少ない心臓CT、頭部MRI、下肢動脈MRI(MRA)で、心臓の血管(冠動脈)、脳や足の血管の状態をチェックし、脳梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症を防ぐように治療を強化したり、専門施設へ紹介します。